脊髄小脳変性症~歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)を中心に~
はいどーもーみっちーです!
僕は神経内科のある病院に努めているのでそっち方面の調べたことを書きます!!
本日は、脊髄小脳変性症(SCD)の中の、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の患者を受け持っているため、調べたことを紹介していこうと思います。
脊髄小脳変性症って?
まず、脊髄小脳変性症とは運動失調を主症状として、緩徐進行性の経過を示す原因不明の脊髄から小脳にかけての変性疾患を総称です。
この中に含まれる疾患には、孤発性のものと遺伝性のものとがあります。
疾患名は
孤発性
・皮質性小脳萎縮症(CCA)
・多系統萎縮症(MSA)
→オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)
→シャイドレーガー症候群(SDS)
遺伝性
- 優性遺伝
・脊髄小脳失調症1型(SCA-1)
・脊髄小脳失調症2型(SCA-2)
・マシャドジョセフ病(SCA-3)
・脊髄小脳失調症6型(SCA-6)
・脊髄小脳失調症7型(SCA-7)
- 劣性遺伝
・フリードライヒ運動失調症(Friedreich‘s ataxia)
SCA-1~17型に分離されているため、症状もそれによって変化します。
余談ですが、グルタミンをコードするC(シトシン)A(アデシン)G(グアニン)塩基配列の繰り返しが、原因遺伝子で異常に伸長することで引き起こされます。
このため、異常に伸びたグルタミン鎖(ポリグルタミン)を含む原因遺伝子産物が不溶性の線維構造を形成し、これらが神経細胞に蓄積することで細胞が傷害を受ける9つの疾患を総称して【ポリグルタミン病】としています。
・球脊髄性筋萎縮症
・遺伝性の脊髄小脳失調症(SCA1、2、3、6、7、17)、
脊髄小脳変性症の経過
脊髄小脳変性症は個々の特徴的な症状を有しますが、大まかな経過が存在し、その経過とともにケアにおいてなにをするべきかの重症度分類が存在します。
重症度分類
1(徴度) 独歩可能;手指動作障害(軽)、会話障害(軽)
2(軽度) 随時補助・介助歩行;食事スプーン、会話障害(軽)
(階段・外出介助、転倒防止)
3(中等度)常時補助・介助歩行-伝い歩き;手指動作拙劣、会話聞き取りにくい
(移動介助、歩行器、手すり、食事補助、ポータブルトイレ、差し込み便器、ワープロ)
4(重度) 歩行不能-車椅子移動;手指動作用介助、会話がわずかにわかる程度
(車椅子、四つ這い、いざり、食事・着衣介助、間欠導尿、導尿、オムツ、シャワー浴)
5(極度) 臥床状態;ADL不能、会話聞き取れない
(ADL全介助、褥瘡予防)
上記で説明した中での、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)について書きます。
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)とは
この疾患は日本では多く、遺伝子疾患です。原因遺伝子はわが国で同定されatrophinと命名されました。
遺伝子は第12染色体にありCAGリピートの異常伸長がみられ、健常人遺伝子ではn数が34以下であるのに疾患遺伝子では49以上に伸張しています。
本症例は、DNAの中での、グルタミンをコードするCAG塩基配列の繰り返し(リピート)が、原因遺伝子で異常に伸長することで引き起こされます。
このため、異常に伸びたグルタミン鎖(ポリグルタミン)を含む原因遺伝子産物が不溶性の線維構造を形成し、これらが神経細胞に蓄積することで細胞が傷害を受けます。
CAGリピートのみられる疾患のなかで世代を経るほどに発症年齢が若年化する表現促進現象(anticipation)が最も顕著であるのが特徴で、若年性になるにつれて、CAGリピートn数が増加します。
A:2個の封入体が橋核神経細胞の核内に認められる。B:伸長ポリグルタミン鎖の抗原性が,多数の橋核神経細胞の核内にびまん性に認められる。ユビキチン免疫組織化学(A),1C2モノクローナ ル抗体を用いた免疫組織化学(B)。スケールバー=20μm。
図2 DRPLA剖検脳における伸長ポリグルタミン鎖の核内びまん性蓄積を呈する神経細胞の分布と頻度A:若年型 DRPLA(CAG リピート数68),B:遅発成人型DRPLA(CAG リピート数60)。核内病変を有する神経細胞は神経系内に広範に存在し,CAGリピート数が多い症例ほどその頻度は高い傾向にある。小脳皮質の所見は顆粒細胞の病変を示す。プルキンエ細胞は陰性であった。各領域における頻度を6段階(%)で表示。1C2抗体を用いた免疫組織化学。Ⅲ,V,Ⅵ:大脳皮質第3層,5層,6層。
病態
主病変は、小脳歯状核―赤核系(小脳遠心路系)と淡蒼球外節―視床下核(ルイ体)系(錐体外路系)の変性があります。
それに加え、他の脳重量の減少、大脳白質髄鞘淡明化、脊髄萎縮などもみられます。
症候
発症年齢によって主要症状が変わってきます。
・ミオクローヌスてんかん型
20歳以前に発症する若年型ではミオクローヌスとてんかん大発作が背景にあり、次第に知能低下(幼児では精神発達遅延)、小脳性運動失調、舞踏病アテトーゼが加わってきます。
・運動失調・舞踏病アテトーゼ型
20~40歳発症の早期成人型では小脳性運動失調あるいはてんかんが初発症状となり、間もなく舞踏型アテトーゼを発現させてきます。
・偽性ハンチントン型
40歳以降に発症する晩期成人型では、舞踏病アテトーゼ運動が初発症状となり認知症を伴ってくるが、ミオクローヌスやてんかんはみられません。
ハンチントン病と類似するので偽性ハンチントン病といわれています。
違うところは、小脳失調がみられ、頭部MRIでは尾状核萎縮はなく大脳白質のびまん性亢進剛域と小脳脳幹萎縮がみられます。
今後の経過
緩徐進行性で特別の治療法もなく運動失調、不随意運動、ミオクローヌスなどの運動障害の増加と認知症の進行により寝たきりで全介助の状態となり、お亡くなりになります。
若年型の方が進行は早いですが、平均罹患期間はミオクローヌスてんかん型で16年、運動失調・舞踏型アテトーゼ型で13年、偽性ハンチントン型で9年、全体としては11年で多系統萎縮症(MSA)に比べるとかなり長いです。
薬物療法
脊髄小脳変性症に対しての、protirelin tartrate(商品名;ヒルトニン)の注射やtaltirelin hydrate(商品名;セレジス)の経口投与の試みがあると報告されています。
その他には、治療法が確立されておらず、対症療法の薬物投与(てんかん発作に対するものなど)が主に行われています。
リハビリテーション
視覚や表在感覚を利用した運動学習が有効であると報告されています。
変性疾患では、病理過程の進行中にも冒されずに残存している部位による機能代償があり、運動失調の軽減(運動障害まではいかず)できるため、生活に大きな支障をきたしません。
運動障害が明らかになった段階では、残存部位は代償不全に陥ったとみなすべきで、機能回復を意図した運動療法の効果は、廃用症候群の軽減を除いて、あまり期待できないと報告されています。
運動障害とみなすためのツールとしては、10m歩行やバランス能力、SARA(失調検査)などをとって、生活レベルの判断をしていくと、比較して、今後のリハビリの方針を立てられるのではないかと思います。
※評価ツールは確立されていません。
症例
経験したケースでは、時期的には偽性ハンチントン型にあたる方です。
YouTubeであげられてるようなミオクローヌス(不随意運動)は生じていません。小脳失調が強く、合目的的な運動は成り立ちません。
認知症も進み、会話が成り立たないこともしばしばあり、返答も一辺倒になっています。
栄養面では、口腔内、頸部にも失調がみられています。
コミュニケーションも不良ということもあり、摂食嚥下に難渋しております。
経管栄養は希望されない場合がありますので、栄養方法等は相談の上となります。
リハビリテーションは、褥瘡予防と、リクライニング式車椅子離床(頸部の失調により、買屈曲過伸展してしまうため、クッション等で対応しています。)、会話、廃用予防程度の運動を実施と重症度分類に合わせた対応が必要です。
最後
いかがだったでしょうか?
脊髄小脳変性症の中での歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症について紹介しました。
病名は出ていても、根本な症状は大きくは変わりません。
しかし、病期というのは差があり、その疾患にあったタイミングでの介入が望ましいと考えています。
神経難病と出会う機会が少ないと思いますが、出会った際には、少しでも役立てばと思います。
では!!!!
参考文献
・山田光則)脊髄小脳変性症における神経病理の変遷:ポリグルタミン病を巡る20年
・栗原まな ら)長期経過観察した歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)28歳女性 -歩行分析の有用性-
・病気がみえるvol.7 脳・神経